アメリカ留学中の杉山先生 近況報告

2020年8月下旬から、アメリカ合衆国ミシガン州のWayne State Universityの化学科で在外研究を行っています。研究のテーマは「天然水に溶存する有機配位子の化学構造に関する研究」です。水環境中の生態系において、一次生産(光合成)を行う生物の活動は大変重要です。光合成は生態系における有機物循環の出発点であり、エネルギー循環を支配します。光合成には二酸化炭素のほかに、栄養塩(窒素・リン・ケイ素など)や鉄をはじめとした微量の金属が必要であることがわかっています。この微量の金属は、水に溶存した形でのみ生物が取り込むことができます。配位子は金属と錯体を生成することにより、水環境における溶存金属濃度を上昇させ、この働きを支えていることが知られています。有機配位子については、重要な役割を担っている分子群であるにもかかわらず、その化学構造はほとんどわかっていません。私はWayne State University 化学科のMary Rodgers教授の研究室にあるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析器(FT ICR MS)を用いて、有機配位子の化学構造を決定する研究を行っています。Rodgers Groupは少人数のグループですが、少人数ゆえに装置のマシンタイムが自由に取れるので、とてもよい研究の環境です。

ミシガンの冬は寒いと聞いていましたが、今年は暖冬らしく、最低気温が-10℃を下回ったことはまだありません。もうすぐ留学期間も半分が過ぎますが、ミシガンの季節や雰囲気を楽しみながら、研究を進めていこうと思います。

Rodgers Group